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中国人SEの行動パターンを理解する

中国人SEの観念に戸惑う

私は海外システム開発の分野でコミュニケーションを支援するコンサルテーションサービスを提供しています。特に日本企業と中国企業との間で発生するトラブルを専門的に扱っていますが、IT技術者の「性格」でいつも頭を悩ませています。

ある研究によると、人間の「気質」を変えるのは困難だが、「性格」は変えることはできるらしい。この場合は、「気質」と「性格」を同一視しないのがポイントになります!

私たちの性格は、次の三層で構成されています。

  第一層(中心部)「気質」
第二層(真中部)「環境性格」
第三層(外側部)「役割性格」

外側部の役割性格をもう少し詳しく説明すると

人は、学習や努力、それに立場によって“自分はこうありたい”、“周囲からこう思われたい”と心に願う像があり、その理想像に近い性格を演ずるようになります。そして、演じ続けるうちにでき上がった性格を「役割性格」と呼びます。

この話は、メルマガ「がんばれ社長!」からヒントを得たのですが、「まさにその通り!」と膝を打ちました。

私は、もう少し優しい言葉を使って、同じことを表現しています。

「性格はかえられないが、行動パターンはかえられる」

この場合は、「気質」に相当するのが「性格」、「役割性格」に相当するのが「行動パターン」だと置き換えてください。

ちなみに「役割性格」は「観念」に相当するものと思ってください。カウンセリングや心理学の分野では、「観念」のことを「人生脚本」と呼ぶことがあります。

ようやく、話を中国オフショア開発に戻します。

私たち中国オフショア開発の世界では、「役割性格」の影響がこんな場面で現れます。


 中国人:「プログラムが完成しました」
 日本人:「でも、エラーが残っているよ」
 中国人:「はい、まだテストしていませんから」
 日本人:「・・・・・・」

 日本人の観念=
  プログラム完成はエラーがすべて無くなった状態だ。
  これだから中国人は信用できない。

 中国人の観念=
  プログラム作業とテスト作業は異なる工程である。
  「プログラム完成」と報告して何が悪い?

このような小さなコミュニケーションのギャップが引き金となって、プロジェクト全体が破綻することがよくあります。

実は、中国企業との共同プロジェクトが失敗する原因は、ほとんどがこのような意思疎通の不具合にあるといえます。


判断のモノサシの違い確認する

前出の性格の話には、次のような続きがあります。

学習すること、成長することにどん欲であればあるほど一番外の性格、つまり「役割性格」が進歩する。その反面、学習も成長も乏しい人は、限りなく「役割性格」が薄っぺらいものとなり、「気質」の通りの人間にとどまっている。

お分かりでしょうか。
つまりこういうことです。

人間の「気質」や「環境性格」を後から変えるのは非常に難しい。

そこを無理やり捻じ曲げるのが怪しい新興宗教や悪徳セミナーが行なう洗脳やマインドコントール。だからこそ、私たちが成長するためには「役割性格」(行動パターン)に着目するのが手っ取り早い。

私は日ごろから次のように心がけています。

 ・自分の「観念(役割性格)」を知りなさい
 ・相手の「観念(役割性格)」を知りなさい
 ・そして相手に合わせた最適な行動パターンを選択して最大の価値を得なさい

これと同じことは、一般の利用者とSEが会話する場面が多いシステム開発の世界にも当てはまります。

特に中国ソフトウェア開発の現場ではかなり有効な交渉術として機能しています。
開発の現場でよく見かける過ちの一つに、日中の担当者が互いの観念を主張し過ぎることが挙げられます。

次の例をご覧ください。


日本人プロジェクトマネージャが中国人SEに進捗報告を促す場面。

日本人:「調子はいかがですか」
中国人:「順調です」

日本人の本音 = 本当はかなり遅れているのでは・・・
中国人の本音 = 最後には帳尻をあわせるので問題あるはずがない

この例では、双方で合意した基準がないままプロジェクトを進めてしまったようです。

つまり違う土俵で会話をしています。
運悪く別のトラブルが併発すると、最後には感情レベルの言い争いに陥ってしまうこともあります。

喧嘩の状態になると、中国人SEが頑固になる傾向が強く何を聞いても

 「大丈夫です/順調です/問題ない」

としか応えない者もいるくらい。

そうなる前に手を打つのが優秀なプロジェクトマネージャーの務めですが、実際はなかなかそうもいきません。

で、上記ケースの結論はどうなるのかというと、日中両社の役員が登場して雲の上の話し合いで決着をつけました。

しかしながら、すべてのケースで事態が丸く収まるはずがありません。

上記以外にも似たような事例は後を絶ちません。

そして多くの場合には、日中双方の担当者に消えがたい傷跡だけが残ります。


2004年07月21日 22:09 in | オフショア開発FAQ , 人材関連/ブリッジSE | 固定リンク |

 

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コメント

この記事をよんで、なるほど、と強く感じられます。著者は日本人らしきですが、問題の焦点を鋭く指摘されまして、大変勉強になりました。

投稿者カク:2004年12月22日 18:55

カクさん、コメントありがとうございます。
作者の幸地司です。ご指摘の通り「日本人」です(笑)。
私は沖縄県出身なので、文化的には純粋な日本人とは異なります。例えば、富士山や桜をみると妙に異国情緒を感じます。おかげさまで、日本人と中国人の中間地点のようなポジションでコンサルティング活動を続けることができました。これからも、よろしくお願いいたします。

投稿者幸地司:2004年12月28日 17:34

その通りです。文化と歴史によって、その国その国人の特有考え方が持っています。

投稿者揚子江:2005年08月05日 19:04

「中国人:「プログラムが完成しました」
 日本人:「でも、エラーが残っているよ」
 中国人:「はい、まだテストしていませんから」
 日本人:「・・・・・・」

 日本人の観念=
  プログラム完成はエラーがすべて無くなった状態だ。
  これだから中国人は信用できない。

 中国人の観念=
  プログラム作業とテスト作業は異なる工程である。
  「プログラム完成」と報告して何が悪い?


面白い話ですね。表現するには難しいケースだと思われます。
日本人同士である場合はどう表現するのでしょう?

投稿者朴 勇進:2005年10月28日 13:45

突然の書き込み、失礼致します。

面白い記事です。やはりコミュニケーションの問題だと思います。今回の場合、中国オフショア開発の前、大分スケジュールがすでに詳しく作られました。もし、日本側で開発期間と作業内容を決めて、中国側で技術者およびPJを集めて、各段階の詳しいスケジュールを策定すれば、スムーズに進むでしょう。

投稿者フライ:2006年11月14日 18:46




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